2017年10月22日日曜日

【翻訳】Distributed Lethality(DL論文)、脅威分散(武器分散)コンセプト

翻訳にあたり

・Distributed Lethalityの訳語については、日本語では「武器分散」という訳語が定着しているが、より抽象度の高い"脅威"の語をあてることとした。


・原文中に登場する"offensive"の語には「攻勢」の訳語を当てた。通常とは異なりここでの"offensive"は次の意味である
defensive(敵が出てきた場合に攻撃する) offensive(敵の居場所を捕捉し攻撃する)
Marvin Pokrant(1999)”Desert Storm at Sea: What the Navy Really Did” Praeger Pub


・"organic"については「有機的」の訳語を当てた。同様にここでは通常の意味とは異なる意味を持つ。
軍事組織の重要な1部分として配備され編成されること。部隊のorganic部分は、陸軍、空軍、海兵隊の組織表に列挙されている部分であり、海軍の戦力運用についての管理組織に配備される。 
DOD Dictionary of Military and Associated Terms 
http://www.dtic.mil/doctrine/new_pubs/dictionary.pdf 

Distributed Lethality



  Thomas Rowden中将、Peter Gumataotao少将、Peter Fanta少将

https://www.usni.org/magazines/proceedings/2015-01/distributed-lethality





より多くのパワーを保持するため、海軍は、水上戦力の攻撃力を高め、そして「対潜掃討水上作戦集団(hunter-killer action group)」としてしられる分散陣形(dispersed formation)に艦艇を配置するべきである。

海軍作戦部長Jonathan Greenert大将の3つの教義において、”戦闘第一(Warfighting first)”が第一におかれ、そして、このことは偶然ではない。Greenert大将が海軍作戦部長に着任するやいなや、海軍全体の戦闘の刃を研ぎ始めた。水上戦集団は、ひとつだけの優先事項―戦闘―しか持たず、そして、水上戦力の組織化、計画、維持、装備調達、運用おいて行うすべては究極的には1つ優先事項に由来するため、この権限にそれほどまでに飛びついた。戦闘態勢、物質的準備、人員的準備に対する集中を更新してきているが、主にここでは戦闘態勢における計画に焦点を当てる。

戦力移転(Force Shift)

移転は、水上戦力内部で目下進行している。これはわずかな動きでも偶然でもない。水上戦力は、いかなるアクセス拒否/領域拒否(A2/AD)環境においても、海軍戦闘能力をもちいるオプションを作戦司令官に与えるため、攻撃態勢に移りつつある。水上艦隊は、高価値または作戦に不可欠な艦艇(units)を常に防護する。これは我々のドクトリンの中核である。しかしながら、洗練された海洋拒否戦略の登場よって、制海(control the seas)のための攻勢命令へ移行する必要性が生じた。増加する水上戦力の脅威(lethality)―特に、水上作戦集団(SAGs)の作戦概念と我々の攻勢兵器おける―は、統合指揮官たちにより多くの攻撃オプションを提供し、また主導権を奪取する他の手段を提供し、そして、敵の計算に対し戦場の複雑性を加えるだろう。
目標は、敵に、敵の保有する防衛戦力を我々の攻撃に対する反攻へと振り向けさせることである。敵は、重要かつ限られたリソースを大規模に防御目標から割り振ることを強要される。これによって、我々は敵の戦力を利用するという作戦上のアドバンテージを増加させる。この移転はいくつかの理由ために要求される。第一に、冷戦終結後、我々の海軍は、敵がおらず、支配的になった。どの列強も海では我々にかなわず、そして、この支配は、海軍が沿岸地域への戦力投射に注力することを可能とした。制海と戦力投射の間の天秤は、後者の方へと強く傾き、そして水上戦力もこれに従って発展した。我々の地上攻撃と海洋安全保障(maritime-security)作戦における熟練は、新たな頂点に達した一方で、対潜水艦作戦(ASW)と対水上作戦(ASUW)における基本的技能は、ゆっくりと失われていった。水上戦力は、そのノウハウを海上の非競争的聖域からのトマホークミサイルの発射へと移行していった。もし米国海軍が現在および将来の対A2./AD(anti-A2/AD)環境下において、海洋の戦闘空間の支配をとりもどそうとするのであれば、我々が望む場所に、望む時に航行する能力に挑戦するだろう急速に発展しているミサイル、航空機、潜水艦、水上艦の脅威に立ち向かわなければならない。
第二に、攻勢への移転は、戦力投射に必要な米国海軍戦力の機動の自由を拒否することに特化して設計された更なる性能向上型A2/AD兵器およびセンサーの発展に対応する。この題材は、以前の巻で述べられているが、我々の利益が我々の海岸線から何千マイルも離れたところに位置するとき、シー・ベースドパワーは、我々の主たる競争における有意であることと、世界における主導権に影響を与え、行使するには絶対的に必要なものであることの両方を覚えておくことは重要である。このアドバンテージに対抗する敵は、前方配備戦力の抑止的価値を減少させ、そして我々が友好国と同盟国に提供している安全の保障に悪い影響を与える。攻勢への移転は、「プレー・フィールドを広げる」ために必要なのであり、そして、要求された場所に対する戦力投射により好ましい環境を作り出す一方、ターゲティングにおけるより複雑な問題を生じさせる。
第三に、攻勢への移転は、海軍水上部隊が海兵隊との統合をより緊密にするためには、重要である(pivotal)。より完全に統合された海兵隊-海軍水上戦力戦闘部隊(Marine Corps-surface force combat team)は、海上と沿岸域における事変に影響を与え、管制することのできる強固なプレゼンスを提供し、統合軍指揮官のために、正しい目標に対して正しい戦力を充当する。他の統合戦力の要素に支援されたとしたら、この海軍-海兵隊打撃戦力は、世界中の国家の安全保障の需要に対応することを更に求められるであろう。最後に、攻勢への移転は、過去20年間を通して、水上戦力の脅威に対してなされた重要な投資を最も効率的に最も効果的に活用する。これら先見の明のある投資は、我々の支配的地位が受け継がれるものでなく、我々の制海能力に対する挑戦が現れてきていたということを認識していた政策立案者によってなされた。全く新しい攻勢的手法によって適用された時、向上された水上艦に対する脅威へのこれらの投資は、水上戦力の投入の復活と制海という中核的能力への回帰の条件を生み出す。

管制はもはや想定されえない

制海への新たな強調は、管制できない水域から海軍は継続的に戦力を投射できないという単純な事実に由来する。海軍は、勢力圏における海洋公共財の自由を制限することを目標としたパワーを追求する敵を前にしては、物品の自由輸送を保証するとはできない。制海は事実上、海軍がなすすべてのことに必要な前提条件となり、その用意は、もはや想定されえない。低強度の海賊から高強度の独立国家の海軍まで及ぶ脅威は、我々が対抗の準備をしなければならない挑戦を引き起こす―そして最終的にはこれを打倒しなければならない。
制海は、常時、すべての海を統制下におくことを意味するものではない。むしろ、それは、他の目標の達成を可能とするために求められる時と場所において、局地的制海を課し、それら目標を達成するのに必要な間、制海を維持する能力なのである。我々は、我々が第二次世界大戦中に島々を見たやり方で海洋の広がりを扱いはじめなければならない―後続の戦力投射作戦を実行するために奪取されなくてはいけない領域として。加えて、敵が選択することと米国海軍艦隊の構造の全ての要素は射撃が始まったときには利用できない公算が高いことを認識すべきである。水上戦力の長期的継続性は、後続戦力の成功の条件を作り出すため、すぐさま攻勢を発起するための準備がなされなければならないことを意味する。
攻勢へのこの移転を支えるものは、既存のプラットフォームと戦闘能力、装備取得の種々の段階で計画された戦闘能力、今日の成功が期待できる研究開発計画に含まれる将来の戦闘能力である。
「脅威分散」を採用するならば、水上戦力―技術革新を通し、指揮統制(command and control)概念とリスクを受け入れることのできる範囲で作戦を実行する向上された能力の出現により―は、将来の海洋作戦に柔軟に順応し、より大きな戦闘効果を生み出すために、局地的制海によって奪取した領域を利用する。
脅威分散とは、水上戦力の個々の構成要素(巡洋艦、駆逐艦、沿岸域戦闘艦[LCS]、揚陸艦、物資輸送船)のもつ攻勢力(offensive power)を増加させ、そして、それらの構成要素を「ハンター・キラー(対潜掃討)SAG」としてしられる分散隊形に配置することにより得られる状況をさす。これは、攻勢的制海を支える原動力となる戦力である。定義の双方の部分は重要である。―戦力の脅威を高めるが、投資の部分最適化と同様の手法でSAGを運用する。攻勢力の増加という結果なしにハンター・キラーSAGを運用することは受け入れがたいリスクをつくりだす。ハンター・キラーSAGは、(戦力投射を含む)その後の活動のための海洋作戦領域を奪取し、より大規模な部隊のための護衛作戦(screening operation)を実施、そして、敵の地上目標を危険にさらされた状態にとどめる。加えて、より多くの地理的に離れた部隊に戦力を分散させることは、敵のターゲティングを複雑化し、攻撃密度を薄めることができる。ハンター・キラーSAGは、航空機・ミサイル攻撃に対し自己防護することが可能であり、また、攻勢作戦を実施する遠征戦力にまで防護を拡大する。これらのハンター・キラーSAGは、空母航空隊や陸上哨戒機による支援範囲外においても、より複雑な作戦を支援するため、ネットワーク化され統合される。

ハンター・キラー仮説

例として、時を2020年代後期にうつし、海軍と海兵隊の緊密な統合を強調するシナリオについて考えてみよう。このシナリオは、LCS(ASWモジュール)アーレイバーク・フライトⅢ級駆逐艦、ズムウォルト級駆逐艦により構成されるハンター・キラーSAG6機の海兵隊に所属するF-35Bのための一時的な遠征作戦基地として奪取し使用することを統合軍の海洋要素指揮官(joint force's marinetime-componet commander)が計画している飛行場の存在する小さな放棄された島の近辺に展開するよう命令されるというものである。
島を守る部隊がいない間は、敵は、3隻からなる対水上戦SAGと複数隻の高速哨戒艇をもって多層領域拒否戦略を展開し、約80マイル北方から作戦を実行すると予想される。加えて、敵がディーゼル潜水艦を24時間前に配備しており、約120マイル北方から作戦を実行する。米国のハンター・キラーSAGの任務は、敵と島の間に位置し、島の偵察を実施すると同時にその領域にある敵の水上、潜水艦戦力を発見し、補足し、無力化することである。換言すれば、米国のSAGの任務は、海兵隊のF-35Bの到着前に飛行場に駐屯しようとする敵の如何なる意図も粉砕することである。ひとたびF-35Bが作戦を開始すれば、SAGは、同領域に海上からの防護を提供することを求められるだろう。
統合ミサイル防衛(integrated air and missile defense:IAMD)を提供するため、SAGのアーレイバーク級駆逐艦―AMDR(air-and missile defense radar、対空、対弾道ミサイルレーダー)を搭載した―は、先進的有人機、無人機の脅威に対して伝統的領域防空任務を実施し、それと同時に弾道ミサイル防衛支援も提供するだろう。
敵の特殊作戦部隊の出現(または敵の駐屯作戦に先立つ他の要素)に際する、沿岸からの迅速な反撃は、SAGのズムウォルト級駆逐艦に搭載される先進的砲システムによってなされるだろう。有機的無人航空偵察(UAS)プラットフォームによる空中からの探知は、状況把握の維持と島の監視、そして敵のSAGに対する水平線下でのターゲティングにおいて重要となるだろう。加えて、UASは、敵目標を根絶または無力化するために必要な正確なターゲティングを12マイルから25マイルの幅の島を超えズムウォルト級駆逐艦に提供できる。
ハンター・キラーSAGのそれぞれの艦は、しばしば航空支援が絶える分散作戦における作戦上の必要のため、敵SAGと高速哨戒艇に対する長射程攻勢的ASUWミサイルを搭載するだろう。これらのミサイルは、既存の艦隊がもつそれから、超える射程、破壊力、生存性における劇的な改良を示し、戦力全体により広く配備されるであろう。
3隻のすべてが高いASW能力を有しており、ズムウォルト級のSQQ 90システムは上層でのアクティブソナーを用いた任務に最適化されており、LCSASW任務モジュールは下層における高い能力をもち、アーレイバーク級のソナーは全体の探査に高い効果を持つ。これら3隻の戦闘艦はすべてMH-60Rシーホークといった対潜哨戒機やMQ-8ファイアスカウト偵察型といった無人空中システムを搭載することができる。
端的にいえば、ハンター・キラーSAGは以下のことが可能である。:SAG及び高速哨戒艇の補足と撃破:沿岸を浮航している陸上目標の識別と破壊:遠征航空作戦に対する航空機及びミサイル脅威の識別と破壊:広範囲の航空監視の提供:敵潜水艦脅威の発見と破壊。ハンター・キラーSAGは、艦載機または陸上機の支援をうけつつ上記の任務を達成できるが、しかし、ハンター・キラーSAGは、その任務を達成するにあたり航空支援を必要とはしないだろう。上記のそれぞれの能力は、戦力中のものか予算のついている取得計画中のものである。脅威的水上戦力(lethal surface forces)F-35Bに対応した水陸両用戦力のこの組み合わせは、敵の前方作戦基地に対する重大な脅威を作り出し、計画とターゲティングに関するさらなる問題を敵に与える。
攻勢効果を伝統的巡洋艦/駆逐艦プラットフォームに追加した上で、脅威分散と制海の諸原則を水陸両用戦力にも適用することに、評価が与えられるべきである。揚陸艦隊に攻勢的能力を付与することに対する強い反対論が存在するが、攻勢能力の付与は、揚陸艦隊の範囲内で敵にまた別の作戦上の悪夢を与える。敵は、有機的(organic)攻勢艦対艦ミサイルと地上攻撃能力をもった遠征戦力に直面するのだ。攻勢的か力を揚陸艦戦力に付与することは、水上戦力を防護という任務から解放するわけでもなく、揚陸艦の主要任務―海兵隊戦力を沿岸へ投射すること―が妥協されなければならないことを意味するわけでもない。しかしながら、攻勢能力の付与は、我々が揚陸艦について違う考え方をし、追加能力を揚陸艦に付与することの効力(power)を熟慮するべきであることを意味するのだ。



脅威混合への価値付与

前述におけるプラットフォームと能力がすでに考慮されているということは、追加能力の必要の前触れとなるものではない。(例えば、わずか3隻のズムウォルト級駆逐艦しか建造が予定されていない。)脅威分散を可能にするいくつかのものには価値があり、緊密に分析され、そして/または加速化されなければならない。これらは以下を含む。

攻勢的艦対艦ミサイル。我々は、海軍航空隊と水上艦隊のための長距離艦対艦ミサイルに対する共通のアプローチにおいて密接に協力している。我々は、"ボルトオン"ランチャーまたは艦艇の既存の戦闘システムに完全に統合されたものにより、如何なる艦艇からも中射程対艦対ミサイルを運用できるという概念実証をおこなった。我々がこの能力の導入を加速するべきであるということは、いっそう明らかになりつつある。
低コスト中射程打撃兵器。ズムウォルト級駆逐艦と沿岸目標に対するその打撃能力を考えると、我々には60海里まで拡大された選択肢(先進砲システム)または1000海里まで拡張された選択肢(トマホークとその後継)が残されている。我々は、既存の発射機から運用可能であり、艦隊全体特に揚陸を更新可能な中射程、経済的打撃兵器をもって、沿岸の目標と急速に交戦できなければならない。
長射程ASW兵器。我々のハンター・キラーSAGは、敵の巡航ミサイルを搭載した潜水艦が我々に対して持ちうる優位を削ぐことを助ける兵器を装備しなければならない。有機的LAMPSヘリコプターから空中投下魚雷は、SAGにおいて高い撃破可能性を持つ兵器である一方で、守勢にある潜水艦を50海里以遠へと追いやりうるこの兵器は、データ座標へのヘリコプターの移動中(または有機的航空機が使用不可能な時)SAGの生存性にとって致命的である。であるから、我々は、ASROC Mk-116と同様の発射機または現在使用されているMK-41発射機から魚雷を発射する代替手段に目を向けている。

レールガン。ズムウォルト級駆逐艦の発電装備によってつくられる78MWの出力はレールガンにとって最適な場、すなわち、沿岸の目標に対する脅威を増大させるのみならず、状況を一変させる、対費用効果のよい対弾道ミサイル、巡航ミサイル防衛兵器も提供するであろう能力を作り出す。アーレイバーク・フライトⅢ級の運営においてレールガンを装備したズムウォルト級駆逐艦は、飛来するミサイルの軌道に分裂弾(fragmenting rounds)を撃ち込み、ミサイルがそこに飛び込むであろう「対空射撃の壁」を形成、ミサイルを破壊または無力化することができるでろう。分裂弾のようなものは、現在、ミサイル攻撃に対する我々の物理迎撃を構成する大型誘導ミサイルに比べ、非常に安価なものとなるだろう。

持続的な有機的空中諜報/監視/偵察およびデータ・リレイ。脅威分散における重要な面は、中央集権化された指揮統制ネットワークなしに分散作戦をひそかに遂行するという能力である。これらのネットワークは、今日存在するそれよりもより高性能になる必要があり、そして衛星が使用不可能またはジャミングが集中している環境においても機能しなければならない。現行の垂直離着陸無人航空システムが攻勢的分散作戦を支援する必要的永続性を持つかどうか依然として不明であるが、ネットワーク化と情報共有を拡大する無人航空システムの潜在能力については調査されなければならない。ハンター・キラーSAGの固定翼または部分固定翼UAVを発進させ回収する能力は、持続的な有機的空中諜報/監視/偵察、データ・リレイの役割においてUAVを投入することの肝となることだろう。

指揮と統制。我々のハンター・キラーSAGは、戦場の把握の確立と脅威分散の効果を発揮させるより大きな役割の一部として重要な友軍の進路、戦場における輸送、戦闘命令を保障する探知から交戦までを行う(detect-to-engage)センサー、電子放出システム、通信システムおよびネットワーク化されたシステムを装備しなければならない。敵のA2/AD戦術の一環として電磁スペクトラムは挑戦を受けると我々は予想している。我々がこのような環境下で対抗し、ネットワークを維持する装備を持たない場合、次世代艦開発の一環という形で対処し、既存艦艇に対してその能力を現行段階まで引き上げるよう改装しなければならない。サイバー領域は、もちろん同様の傾向にあり、もっとも新しい領域として現れている。そして、ここまで議論してきた海軍の水上戦力、いうまでもなく米軍全体は、敵が明らかにそうしようとしているように、最も動的で最も困難な多くの点において、戦闘空間の諸段階の前に出なければならない。これらすべての新しいプラットフォームと脅威分散について議論すれば、当然、「新たな装備品に付随して生じる訓練はどうするのだ」と尋ねられる。答えは自明である。水上戦力の分散脅威混合のそれぞれの追加要素における人員と訓練の問題は、1要素である。つまり、相応の勤勉さと訓練機材への必要なだけの支出を無くしては、そもそも最初から、もっとも強力な革新は、机上の空論へ帰されるだろう。

「最も効果的で効率的な手法」

脅威分散は、より強力な艦艇を革新的な運用法と結びつける。これは、敵の侵略に対する意味ある抑止と抑止が失敗した場合に即時利用可能な戦闘手段を提供するため、水上戦力の固有の強み(機動性と永続性)を利用する。敵が仕留めなければならいプラットフォームがより先進的であればあるほど、敵の監視アセットをより薄く分散させられ、そして敵の攻撃密度はより薄いものになるだろう。我々の戦闘能力が分散すればするほど、我々はより多くの目標を捉え、そして、敵の防衛コストはより高いものとなる。
これは比較的単純だが力強い概念である。分散脅威の原則を適用することにより、水上戦力は、ますます高まりつつある海洋拒否能力に対する戦力投射におけるアメリカの能力ある利点を維持し、拡大するすることを助けることができる。分散脅威は、今日我々が保持している艦隊と近未来に計画される艦隊を活用するもっとも効果的で最も効率的な手法である。これには、技術の飛躍的進歩も、大規模な予算増額の必要も、実行に必要な艦数の増加も必要としない。今日保持している艦艇をより上手く利用し、そして、艦艇をどう武装させるか、どう運用するかということについて違うように考えることを単に求められているに過ぎないのだ。
必要なものは意志である。現在の運用方法を変更しなければならいということを認識する断固とした精神なのだ。我々は、前へ進むために必要な勇気、既成概念と前例を疑う勇気を見せ、リスクを引き受け、失敗から学ばなければならない。登場しつつある概念を実験し、これに磨きをかけなければならないだろうし、莫大な距離を通してでの自律的作戦により楽観的(comfort)にならなければならないだろう。しかしながら、これはリスクに値する。より広い姿勢であり、より一様に致命的な水上戦力は、支配的な海軍力―70年以上にわたり世界が利益を引き出してきたもの―というアメリカの地位を維持することにおいて重要な役割を演じるだろう。