Robert J. Sunell
ARMOR May-June 1998 edition for ARMOR’s 125th anniversary
機甲部隊の投入に関する原則
最近、我々は、Robert J. Sunell将軍(退役)から「1948年における機甲部隊の投入に関する原則」とこれがどれほど多く今日でも有効であるかということを指摘する短い覚書を受けとった。我々は、これにこたえなくてはならない。我々の読者のうち、年老いたものしか「1948年における機甲部隊の投入に関する原則」を目にしていないので、我々は、これらの原則から第28号、1948年ごろに戦車学校にて専門の入門として使うために出版された「機甲部隊の投入に関する原則」を再版する。―著者
・序論
ここ10年で戦闘の技術は、大いに変化した。空軍力は、我々の軍事概念を大いに変化させたが、しかし陸上戦力の必要性を消し去ったわけではない。むしろ、いくつかの機甲部隊とそれぞれの軍の助け、そして代わりに共通の任務を成し遂げられることによって助けられる全体としてバランスの取れた国防団をより密接にするような効果があった。
地上では、我々は、より開かれており、より流動的な戦闘、より速い機動、より多くの部隊の四散、より弾性のある防衛編成、そして、特定の点に大戦力を集中させ、以ってより一般に使われる機動作戦により突破するということを目撃してきた。機甲部隊によりこれらの億は達成された。我々は、機甲師団、機甲軍団、機甲軍の投入を目撃してきた。アメリカ陸軍の新式野戦軍は、実質的には機甲軍である。この新式野戦軍は、3500両の戦車とそれに加えて多くの自走砲を保有している。
戦争の機械化手段を生産する能力とこれらの手段を運用する能力は、アメリカ合衆国の並外れた利点である。我々は、潜在的敵により保有されるより多数の人的資源の優位を相殺するためにこの資産を開発し利用しなければならない。これはまた、戦場での人的損耗をするという努力の促進でもあるのだ。
機甲部隊は、機動性、装甲に守られた火力、そして決定的衝撃を持つ作戦という武器を持つ。機甲部隊は、地上部隊においては必要不可欠であり通常の構成員なのである。機甲部隊は、野戦軍指揮官の手の内に決定的な目標をもたらす。機甲部隊は、現代的戦場におい
軍司令官が究極的な目標―敵軍の戦闘意志の破壊―を達成できる手段を与える。
機甲部隊の利用を規定する確かな基本的原則はいくつか存在する―しかし指針にしか過ぎない。ブリッジにおける原則と同様に、機甲部隊の利用ついての原則には、「常に」や「決して」といった言葉はないのだ。機甲部隊の利用に関する原則の成功的適用は、心理における柔軟で、思考において進歩的で、想像において自由である指揮官たちと参謀たちに完全に依存しているのである。
・機甲部隊は、歴史的な騎兵の役割を演ぜよ
機甲部隊は、19世紀のナポレオン戦争において騎兵が達成した役割を現代戦争において達成する。機甲部隊は圧倒的火力を大規模な機動性と組み合わせている。19世紀後期から20世紀の騎兵は第一に機動力に依存していた。機甲部隊の火力は、その機動性の特徴に関する思慮において見落とされてはならない。
長年陸軍は、敵の時間的空間的要素を困惑させうる光のごとく高速移動する部隊を求めていた。それらは望ましい機動力を得るため攻撃力の一部を犠牲にすることをいとわない。騎兵は、そのような軍に発展させられた。自動火器とそのほか効果的火器、自動車車両の広範な使用により、馬は最早効果的な武器でも戦場における効率的な輸送手段でもなくなった。機甲部隊は、―高機動力と大火力の両方を組み合わせ―現代戦争において歴史的な騎兵の役割を引き受けているのである。
・機甲部隊は戦略的戦術的脅威であれ
機甲部隊は戦略的、戦術的武器だ。機甲部隊の存在は、局所的には、いかなる部隊に対する脅威であるのみならず、その長距離移動能力と迅速な戦闘参加能力は、離れたところの機甲部隊の存在を如何なる作戦への脅威にする。
・機甲部隊はその機動力を使用せよ
装甲は部隊、「機動的な装甲により防御された火力」として描写される。機甲部隊は、移動と射撃能力をもってその目標を達成するが、とりわけその移動能力をもって目標を達成するのである。何マイルも離れた師団以上の規模の機甲部隊は、同規模の徒歩で移動する歩兵の10%から20%少ない時間で戦場に到着する能力を持つ。行軍隊形から迅速に移送される能力は、移動速度に付け加えられなければならない。機甲部隊の機動力は、戦車のみに由来するのでなく、中隊から師団に至るまでのすべての組織段階における移動支援の広範な組織に由来しているのだ。
・機甲部隊は、敵に近接するためにその火力を使用せよ
機甲部隊は、その力を作戦の決定的点に集中する。師団以上の規模の機甲部隊は、装甲に防護された機関銃と砲による圧倒的優勢を持つ。戦車砲は、本質的には敵戦車に使用される武器である。戦車砲は大砲(砲兵)ではない。機甲部隊の火力と衝撃力の利用においては、砲兵とそのほかの支援武器は、戦車の車載機関銃と機械化歩兵が敵に接近し、これを撃破することを可能にする支援火力を提供するのである。
・大規模な機甲部隊は決定的な衝撃効果を生み出せ
大規模な機甲部隊による攻撃の終わりに部隊に訪れる心理的衝撃効果は、すさまじい。この効果は、貯水池の端の近くに投げ込まれた石から生じる波のように攻撃地点から半円の同心円状に広がる。もし攻撃が大規模であれば、それらの衝撃の波は、敵の師団、軍団、軍司令部にまで到達する。衝撃効果は、機甲部隊に防御の一部を与え、そして攻撃をうけた敵軍の崩壊を早める。機甲部隊の大規模利用の衝撃効果は、例えば投入される戦車の数が二乗か三乗かによっても左右される。決定的衝撃効果を生み出すのには少なすぎる規模の機甲部隊による攻撃は、しばしば大規模な損害と不確定な結果を生み出す。
・師団以上の規模の機甲部隊は、柔軟でなくてはならない
機甲作戦の間中起こることのすべてを可視化する能力は、多くの人々に与えられていない。予期せぬ偶然は発生する。地勢、天候、編成、障害、そして敵などの状況に関しては、未来のことまでは正確に予測されない。あらゆる状況に対する編成の設定は、機甲戦術においては、危険をはらんだ過度の単純化だ。機甲師団は、二つの柔軟に組織されたコンバットコマンドにおいて戦うために設計されている。それぞれのコンバットコマンドは、時に応じて、近くの任務を最も優位的にこなすために構成される。それぞれのコンバットコマンドは、すばやく変化する状況において作戦を扱うのに適切な参謀を持ち、そして、断片的な指令での任務形式の下で職務をこなすように訓練された将官により指揮される。
・機甲部隊は、啓開兵器たれ
機甲部隊は、比較的狭い戦線での敵障害を迅速に啓開しなければならない兵器である。機甲部隊は、縦深を維持し続ける限り力を維持する。障害が減少し、敵の強力な反撃が最早十分発生しそうもなくなるまで、機甲部隊は、散開してはならない。
・機甲部隊は、その優位性の維持のため、縦隊にとどまれ
これは、どうしても狭い戦線を移動するだとか、単一の道を移動するということを意味するのではない。機甲部隊は、広井先生を前進するだろうが、しかし、機甲師団とコンバットコマンドの戦術的陣形が縦隊である限り、指揮官は、如何なる偶然に対しても準備ができており、そして上位指揮官の反応と指令を待つことなく、迅速な行動が行われる。縦隊のコンバットコマンドによる敵防衛地帯の突破と撃破は、突破作戦において、同じくらい、または、より効果的でさえある戦力を与えると同時に、予期せぬ偶然に対処し、突破時に迅速に追撃を実施する予備のコンバットコマンドを温存するのである。師団以上の規模の機甲部隊は、作戦成功の予想において組織されるのだ。
・機甲部隊は、深く進撃し、集結し、破壊せよ
機甲部隊指揮官は、目標の本質を見極めなければならない。岩の表面を爆破しようと思う工兵が、深く穴をあけ、爆薬を設置し、爆破する。彼は爆薬を岩盤の表面に仕掛けていない。機甲作戦も同様だ。この手順のなかで、何が装甲部隊を守るのだろう?その答えは、機甲部隊に逆襲する能力を支配する、速度、機動力、柔軟性、敵指揮官と参謀の非活発性、そして、時間的空間的要因である。機甲部隊の衝撃効果は、指揮官と参謀にさえ達し、そして慣性をあたえ、逆襲するための時間を奪うのだ。
・機甲部隊は任務形式の命令を要する
機甲部隊は、任務そして必要最低限かつ調整した指令が与えられなければならない。機甲部隊は、直属上位の指揮系統の究極的かつ決定的な目標が与えられなければならない。なぜなら、より多くの実りを得るために、機甲部隊は突破の迅速な優位性を利用できるからだ。
・下位の編成単位においては、機甲部隊は、諸兵科連携を要する
師団以上の機甲部隊は、緊密な関係にある戦車、歩兵、工兵、砲兵の要素からなる。これは、おそらく、また、しばしば中隊レベルまでに下方拡大される。中隊レベルでは、戦車中隊は、砲兵の前線観測員と同様に歩兵と工兵を持ちうる。大隊レベルでのこのような状況は、通常のことである。戦車部隊指揮官が常に指揮を執っていると想定すべきではない。しばしば、機械化歩兵部隊は、戦車と工兵、砲兵の近接砲撃支援が組み合わされた基礎的戦力となる。
・いったん機甲攻撃の慣性が得られたら、その進路を突破することを許可するべきだ
機甲師団は、進撃をした時、巨大な慣性をもつ。統制線、限られた目標、そして進撃を継続するために高いレベルの判断を要するそのほかの要素により、機甲部隊を鈍らせることは、その慣性を霧散させる―しばしば敵がするより早く。機動に関する如何なる制約も敵に対して反応する時間を与えうるし、そして、しばしば主導権の喪失という結果に終わるだろう。
・成功した機甲作戦は、丁寧な作戦立案と、その暴力的実行によって特徴づけられる
機甲作戦は、多くの道路空間、密接な時間調整、手の込んだ補給計画、そして広範な整備に関する計画を必要とする。機甲作戦は、全兵科の念入りな調整と協力が必要とする。野戦砲、迫撃砲、航空支援は、結び付けられねばならない。通信は、調整され、完璧に確立されなければならない。これすべてを行うことは、徹底的で思慮深い計画を必要とする。
いったん計画が終了したら、実行はクライマックスだ。実行は、望まれた機動力、火力、衝撃効果が得られた場合、暴力的でなければならない。熱の入ってない(中途半端な)実行は、機甲作戦に期待される結果に致命的である。
・機甲作戦は、補給と整備を要する
適切な計画と補給と整備設備は、不可欠である。1マイル機甲師団を前進させるためには約1000ガロンの燃料を使用する。燃料切れの機甲部隊は、容易に撃破される。火力は、弾薬の大量使用を意味する。食料も必要である。典型的な機甲作戦においては、補給ルートは、敵の作戦によって数日遮断されうる。これらの偶然は予期されなければならず、そして、成功を保障するために提供された手段がなければならない。コンバットコマンドは、最終目標に到達し効率的に維持するために必要な補給物資を携行するべきである。
戦車とそのほかの装甲車両は、頻繁で複雑な整備を必要とする。手段は、機甲師団において利用可能である。すなわち、もし戦闘車両の好ましい均衡が敵に対する継続的作戦において、戦闘中に保たれているようなら、時間が与えられなければならない。予備コマンドを通した戦闘部隊のローテーションとコンバットコマンドとしての予備コマンドの頻繁でない投入は、整備に必要な時間を供給するだろう。
・機甲部隊の防御作戦は、弾性的であるべきである
機甲部隊は、非常に効果的な防御を実行できるし、実行してきた。機甲部隊は、これを弾性的であることによって、打撃とともに前進することによって、反撃によって、敵の攻勢形成を狂わせることを見越しての襲撃によって非常に効果的な防御を実行してきた。機甲部隊は、脆い防御線を作ったのではない。機甲部隊は、それ自体、相当な縦深を確保している。防御は、通常は、機甲部隊と関連した任務ではないけれども、将来の戦争における機甲部隊の能力は、見逃されてはならない。
・機甲部隊と戦術空軍は仲間である
機甲部隊と戦術空軍がともに緊密に働いたとき、膨大な力を持った一団を形成するというのは文字通り本当である。この協力関係は、偶然起こるものではない。それは、緊密な関係、念入りな空地訓練と、それぞれの相手の能力、制約、望まれる関係を得るための方法についての深い理解を必要とする。機甲部隊は、支援を必要とするものである。機甲部隊は、強力関係をもたらすために、もし必要であれば、中途半端な前進どころでなく更なる前進をしなければならない。
・結論
機甲部隊の運用に関する原則の適切な適応は、素晴らしい結果を生み出すだろう。これらは、規則として考えられるのでなく、状況の念入りな予測の後の指針として考えられるべきである。慎重な計画が求められている。暴力的な実行は、したがって、配当を支払う。心の、概念の、編成の柔軟さは機甲部隊指揮官とその幕僚に必要である。機甲部隊指揮官は、すすんで冷静に脅威を計算しなくてはならない。彼がカードを保持しているときは、すべてのチップをもってカードを下げなければならないし、そして彼が彼の手に勝利の手を保持しているか確信できないときは、しばしば彼はすべてのチップをすすんでつぎ込まなくてはならない。